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「和」のお作法って? 和田さん教えてください。

「和」の文化を一番身近に感じるのはやはり「食」。しかし、食べる機会はあっても「和」のお作法に触れる機会は多くはありません。
日本人でありながら、なかなか知る機会のない「和」のお作法。そこで、「木曽路」接客長の和田さんに聞いてみました。

株式会社 木曽路 接客長 和田 恵理
株式会社 木曽路
接客長 和田 恵理
1991年生まれ、三重県出身。大学のインターンシップでホテルのレストランに派遣されてから、飲食業に興味を持つ。卒業後、木曽路に入社し、接客の基本動作や和の所作、着物の着付けなどをいちから学ぶ。今年で5年目の26歳。現在は、木曽路新橋店の接客長として、接客業をはじめ、経費管理や従業員の教育も行い、店全体のスキルアップを目指す。

—最初に「和」の接客の楽しさと大変さについて、教えてください。

 楽しさはたくさんあるんですが、まずは春夏秋冬という日本独自の四季が料理から感じられるという素晴らしさをお客様と一緒に共感できることですね。木曽路ではお料理を提供するときに必ず説明をするんです。その目的は、お客様に付加価値を高めてもらって、より一層おいしく召し上がっていただくためなんですけど、きちんと説明できて喜んでもらえたときの達成感はなにごとにも変えられませんね。また、着物で接客をするので、和装が好きな方と会話がはずむこともあります。
 大変なことは手元をはじめとする「和」の所作ですね(笑)。着物だと洋服よりも動きが目立つうえに、お客様からの注目を浴びやすいので立っているときも、歩いているときも常に気をつけなくてはいけないんです。お鍋をつくるときは特に緊張します。お客様が沈黙になる瞬間があって、そのときは私の指の動きを見ていらっしゃるので(笑)。最初は指をそろえてお箸を持つんですが、だんだん揃わなくなったりしてしまうこともありました。
 普段意識していない動きを意識するというのは、思った以上に大変なんです。

—「和」のお作法をご自身が学んでみて気づいたことはありますか?

 もともと私は、着付けもできませんでしたし、和の作法に興味があったわけではなかったんです。でも、学べば学ぶほど日本文化を知ることが楽しくなって、「あぁ、日本人にうまれてよかった」と心の底から思えるようになりました。所作はもちろん、言葉づかいもとても美しいですし、それを働きながら身につけられるというのは素晴らしいことだと思います。アルバイトをした学生さんに「和装スタッフとして働くことで、「和」の文化を学ばせていただいて本当によかった、自分の自信になりました」と言ってもらえることも多いので、とてもうれしいです。
 また、私自身、プライベートで食事に行ったときに、テーブルマナーについて褒められるようになりました。そういうときは「和」の作法をきちんと学んでいてよかった……と思わずにはいられませんね(笑)。

—ほかにはない和装ならではの「和」の魅力とは……?

接客さんが着物姿で迎えてくれて、目の前に季節のお料理をだしてくれる……就職活動のときに大きな魅力を感じたのはそこでした。日本人の根本的なところを和食から感じられる安心感。私は、海外に留学していたこともあったので、余計にそう感じたのかもしれません。弊社は日本文化を伝承している企業ということもあって、日本文化に詳しい方がたくさんいらっしゃるんです。その中で「和」を知ることが本当に楽しいし、ひとりでも多くの方に広めていきたいなと思っています。
 また、木曽路はご慶事のときも、ご法要のときにもご利用いただけるお店なので、ご慶事では楽しい気持ちをお客様と共感し、ご法要のときはお客様のお気持ちによりそうことができるんです。これは、とても特別なことで、和装の仕事ならでは……といっても過言ではないと思います。

美しい所作には意味がある
和田さんから教わるおもてなしのお作法

其の壱 御辞儀の角度は3種類……それぞれが持つ意味を知ってみましょう

私たちの場合、待ちの姿勢は常に5度。これは、お客様がいつ来てもお迎えをしたいという気持ちの現れで、ここがスタートになります。御辞儀は3種類で、まず敬礼の15度(1)。お席の中で何回も使うので、あまり深いとお客様の負担になってしまうことから自然な御辞儀を意識しています。次は中礼で30度(2)。最初と最後のご挨拶で使うので、メリハリのある角度になっています。最後は最敬礼で45度〜90度(3)。謝罪のときの御辞儀で、場面によって深さは変化します。

御辞儀の角度は3種類……それぞれが持つ意味を知ってみましょう

其の弐 お客様の部屋へ入室するときは襖を「三手」で開けるのが基本

襖は、取っ手に近い手(今回は右手)で5cmほど開けてから、襖の端に添わせて手を下げます。そこから体の半分がお客様に見えるぐらいまでまずは開けます(1)。いきなりすべて開けてしまうとお客様が驚いてしまうので、ここでアイコンタクトをとります。それから手を代えて体が全部はいるぐらいまで開けます(2)。この流れを「三手づかい」といい、襖を閉めるときも必ず半分まで閉めてから……と同じ流れで行います。こうすると、襖を閉める途中でお客様に声をかけられてもすぐに対応できるので、動きが無駄なく美しく見えるんですよ。

お客様の部屋へ入室するときは襖を「三手」で開けるのが基本

其の参 お茶を提供する際は「二度置き」どんなときも心遣いを忘れずに

入室して、ご挨拶をしたらお茶をだします。このとき、両手で湯のみを持ち、お客様の前に置いたら、両手を合わせて「どうぞ、木曽路にご来店くださってありがとうございます」という気持ちを込めて左手、右手の順番で手を下げます。つまり、一度目はお茶を置き(1)、二度目は気持ちを置く(2)。これが「二度置き」です。手を下げるときに左手と右手で時間差をつけるのもポイントで、こうすることでお茶が置きっぱなしに見えない。丁寧な置き方に見えるんです。

お茶を提供する際は「二度置き」どんなときも心遣いを忘れずに

—和田さんの今後の展望、そして飲食業界を目指す学生へメッセージをください。

 今、接客長になって2年目なんですが、やっと地に足がついてきたという感じです。だからまだ今後の展望を明確には語れないのですが、できるかぎり、木曽路で接客という仕事を続けていきたいです。
 今後、東京オリンピックの開催などで、日本へ来られる外国のお客様はますます多くなると思います。遙々日本までいらっしゃった外国のお客様のためにも、日本文化の素晴しさや美しさを感じていただけるよう、精一杯のおもてなしで、たくさんの笑顔と思い出、そして感動を提供できるよう頑張っていきたいと思います。
 飲食業界は大変だと思われがちですが、お客様と喜びを共有できるすばらしい仕事です。お客様の感動は、私たちの喜び……というのが会社の経営理念なんですが、まさにその通りで、私がずっとこの会社で働き続けたい理由もそこにあります。だからもし、人を喜ばせるのが好きだとか、日本文化に興味があるという学生さんには、ぜひ挑戦してもらいたい世界です。「和」の作法を覚えることで、きっと私と同じように「あぁ、日本人にうまれてよかった」と感じていただけると思います。

和田さんの今後の展望、そして飲食業界を目指す学生へメッセージをください。

2019年2月掲載

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